古い映画ですが、『コロコダイル・ダンディー』をご存知でしょうか? オーストラリアの奥地でワニと格闘しながら生活するクロコダイル・ダンディーがニューヨークへやって来て、ひと騒ぎする話です。
印象深かったのは、ニューヨークでの初日、クロコダイル・ダンディーが街中で出会う人たちにニコニコしながら「グッドダイ(こんちにわ)」とあいさつしまくるシーンです。見知らぬ人からあいさつされることになれていないニューヨーカーは、戸惑ってしまいます。
カリフォルニアに来て、クロコダイル・ダンディーを思い出すます。街中を歩いていると、見知らぬ人からあいさつされたり、話しかけられたりすることが多いのです。写真は、昨年末にサンタモニカのビーチで遊んでいる長女と長男です。
日本で特に用事もないのに見知らぬ人に微笑みかけたり、話しかけたりすると、変に思われるでしょう。こちらでは、歩いていてすれ違う人と目が合いながら、あいさつしなかったり、目を伏せたりすると、逆に失礼になります。
いくつか実話を紹介します。
1つ目は、小学校へ長女を迎えに行った時のこと。一方の手に長女、もう一方の手に長男、胸にはベビービヨルンのベビーキャリアで抱えた次女。校内で知り合いと立ち話していた保護者の1人はわたしを見かけると、ニコッとしながら言いました。
「まあ、完璧なシャッターチャンスだわ! パシャ」
この保護者はカメラを持ってなかったのですが、カメラでわたしと子供たちを撮影するふりをしたのです。わたしが子供3人と歩いている様子を見て、とても微笑ましい光景に見えたのでしょう。
2つ目は、スポーツクラブ「クレアモントクラブ」の中。わたしはいつも滑車付きの旅行バッグをガラガラさせながら歩いています。この中にシューズや着替えを入れているのです。
ある時、クラブの敷地内で、同じような滑車付きのバッグを引きながら歩いている女性会員が見えました。すれ違う時に目が合うと、「あら、あなたも同じじゃない! お互い楽ちんが好きなタイプというわけね!」と声をかけられました。
3つ目は、わたしではなく妻の話。大統領選が終わった直後、妻はクレアモント・クラブ内のカフェテリアでコーヒーを飲みながら勉強していました。隣のテーブルには小学校低学年の女の子。親は何かの用事でテーブルから離れていて、女の子は暇なもよう。
「ねえ、投票した?」
妻は突然、女の子から話しかけられました。しかも、小学校低学年の子供から、いきなり選挙の話題を振られたのです。
「あのね、わたしは日本人だから、選挙権がないんだ」
このように妻が返事すると、女の子は「わたしにも選挙権がないの。でもオバマがいいと思う」と言い、その後はなぜオバマがいいのかについて、長々と説明してくれたそうです。
同じアメリカでも大都市は違うと思います。ニューヨークでは見知らぬ人と目があっても、ほほ笑むことはまずないです。ロサンゼルス市内も似たようなものでしょう。
ただ、アメリカの中で西海岸は全体として開放的でフレンドリーな気がします。東海岸は歴史があるだけに、権威主義的な傾向があります。重苦しい東海岸から逃れて西海岸へ来る人も多いのです。
1990年代後半、わたしはニューヨーク駐在でした。サンフランシスコやシアトルなど西海岸へ何度も出張しましたが、そのたびに「西海岸の人たちは人種が違うなあ」と思ったものです。
西海岸の中でも、南カリフォルニアはとりわけのんびりした雰囲気が漂っています。温暖な気候が影響しているのかもしれません。クレアモントは大学関係者が多い田舎町だから、なおさらのんびりしています。
その意味では、かつて数年間駐在したことがあるスイスのチューリヒも同じ。クレアモント同様にフレンドリーでした。チューリヒは国際金融都市の1つとはいえ、アルプスに囲まれた牧歌的な国の中にあります。いい意味で田舎町でなのです。
もっとも、スイス人はどちらかといえば恥ずかしがり屋で、日本人と似ていました。気軽に話しかけてくるという感じではありません。気候的にもスイスはカリフォルニアとはまったく違います。
しばらく南カリフォルニアに住み始めると、郷に入っては郷に従えを実践している自分に気付きます。街中ですれ違う見知らぬ人に自ら微笑みかけていることもあるのです。
アメリカは大不況の真っただ中。とりわけカリフォルニアは経済的に厳しい状況に置かれています。でも、そんなカリフォルニアに住み始めたというのに、わたしが無意識にほほ笑む回数は日本にいた時よりも格段に増えました。
話が少し飛びますが、幸せかどうかは経済的な豊かさとは関係ないのかもしれません。たとえば、スイス駐在時代に何度も足を運んだイタリア。経済的にはパッとしない国なのですが、国民は生活を楽しんでいます。イタリアとカリフォルニアには共通項があると思います。
お久しぶりです。お元気ですか。
最近、blogを見つけて楽しんで拝見しています。みんな元気そうで何よりです。
ちなみに、僕が生まれ育った飛騨高山では、知らない人にも挨拶をするのが当たり前だったような気がします。
だから最初、東京にきたときはびっくりしましたね。他人には関心がない人が多くて。
>街中を歩いていると、見知らぬ人からあいさつされたり、話しかけられたりすることが多い
そんな街に住んでみたいです。僕はそういうところに住んだほうが自分らしく生きれるのではと思います^^
投稿情報: oyobe | 2009年4 月16日 (木) 18:46