キング・オブ・ポップ(ポップ界の王者)、50歳で死亡――。きのう、こんな大見出しがロサンゼルス・タイムズの1面に踊りました。すぐ下にはツアー中のマイケル・ジャクソンが熱唱している写真。これも特大です。ハリウッドを本拠地にする新聞の本領発揮です。
マイケル・ジャクソンの死は、個人的にも悲しいニュースでした。アルバム『スリラー』が空前のヒットとなった時、わたしは大学生。当時、マイケル・ジャクソンのミュージックビデオを見て、衝撃を覚えたものです。ジョン・レノンが凶弾に倒れた時の感情をふと思い出しました。ユーチューブを利用して、ジャクソンファイブ時代の幼いマイケル・ジャクソンが『帰ってほしいの(I want you back)』を歌っているのを見たら、何とも言えない喪失感を覚えました。
それにしてもロサンゼルス・タイムズはすごいです。新聞不況の真っただ中に置かれ、編集スタッフも大幅に削減されているというのに、1面の3分の2ほど使ってマイケル・ジャクソンの死を伝え、さらに11、12、13、14、15の各面を全面的に関連記事だけで埋め尽くしました。合計で6ページ近くもぶち抜きで使ったのです。アマゾンの電子書籍端末「キンドル」が話題になっていますが、大きなカラー写真も使える新聞の迫力にははやり負けます。
昨年9月のリーマン・ブラザーズ破綻は世界的な大ニュースでした。「大恐慌以来の経済危機」と言われたほどでしたから。でも、ロサンゼルス・タイムズは今回のマイケル・ジャクソンの死をより大きなニュースとして扱いました。リーマン破綻は「ウォール街の新聞」ウォールストリート・ジャーナルに任せればいいけれども、マイケル・ジャクソンの死は「ハリウッドの新聞」として他紙に負けるわけにはいかない――こう考えたのかもしれません。
ニュースが最初に流れたのが木曜日(6月25日)の夕方。その瞬間から記者を総動員し、突貫工事で紙面を作ったのでしょう。アーノルド・シュワルゼネッガー、クインシー・ジョーンズ、マドンナ――。著名人からのコメントも盛りだくさんに詰まっています。調べたわけではないですが、アメリカ中の新聞を見比べたら、ロサンゼルス・タイムズは記事の量と質で圧勝していたのではないでしょうか。
同紙が、グラミー賞やアカデミー賞の授与式が行われるロサンゼルスを地元にしているだけのことはあります。ちなみに、マイケル・ジャクソンが息を引き取ったのもロサンゼルス市内の病院です。
もちろん、事前にある程度記事を用意していた可能性はあります。新聞社ではよくあることです。でも、マイケル・ジャクソンは世界ツアーを目前に控え、死の直前まで精力的にリハーサルをしていたようです。ロサンゼルス・タイムズが死を予期できず、ほとんどゼロから紙面を作ったとすれば、脱帽です。経営が揺らいでいても、同紙がコアコンピタンスとしている映画や音楽分野の取材力は落ちていないのかもしれません。
メルボルンの6月27日付朝刊(日曜版)、The Herald Sun、The Age、全国紙の The Australianとも、1面は彼の大きなカラー写真入りの特大記事。TVも通常番組をMicheal Jackson特集番組に切り替えたりで、Mediaは、大々的に取り上げていました。Southlandの店で、CD、DVD等扱っているところも、彼のCD、DVDは開店後すぐ売り切れたという状況。改めてかれの人気が世界的なレベルであること痛感しました。
投稿情報: tsmat | 2009年6 月27日 (土) 17:30