きのうの夕方、長女Kの同級生キアナが「Kはいる? これからボールで遊ぶんだ」と言いながら、わが家に飛び込んできました。いつものようにはだしでした。
キアナのすぐ後からは、ボールを持った両親も姿を現しました。お父さんのケニーとお母さんのサラです。「天気がいいから芝生の上でボール蹴りでもやろうと思って」。2人ともキアナ同様にはだしでした。
小学校から帰宅したばかりのKは大喜び。隣に住む同級生ジェニファーも誘って、集合住宅の中央にある中庭へ飛び出しました。ただ、Kもジェニファーも靴を履きました。ちなみに、ジェニファーは南カリフォルニア人ではなく韓国人です。
2月24日付の「カリフォルニアで傘を買う」という記事では、南カリフォルニア人はあまり傘を持たないと書きました。それに加えて、はだしのままで外を歩く習慣もあるようです。
さて、芝生の上では、Tシャツとショートパンツ姿のケニー、サラ、キアナ、さらにキアナの妹メイダは、はだしで大はしゃぎ。南カリフォルニア人らしく、みんな底抜けに明るいです。この光景を見ると、カリフォルニア経済が未曾有の苦境に直面しているという現実を忘れてしまいます。
わたしは1980年代後半と1990年代後半、ニューヨークに住んでいたこともありました。ニューヨーク時代には、はだしのままで近所を訪ねるニューヨーク人を見かけたことはありませんでした。
地元のビーチで生まれ育ったケニーは、若いころは筋金入りのサーファー。カリフォルニアはもちろん、ハワイなど世界各地のビーチを転々としながら、国際競技にも参加したそうです。キアナと一緒に写真撮影され、新聞に出たこともあるとか。
ケニーに聞いてみました。
「南カリフォルニアでは傘を持たない人が多いけれども、はだしのまま外で動き回る人も多いの?」
「そのほうが気持ちいいでしょう? 特に、きょうはこんなに天気がいいのだから。個人的にはできるだけ靴は履かないね。もちろん、足の裏は汚れるけれども、大したことじゃないよ。とにかく靴を履くと気分が悪くなるんだ」
ケニーの「気分が悪くなる」という表現は、正確には「Wearing shoes drives me crazy」でした。「気が狂ってしまう」というニュアンスがあるほど強い表現です。
前にも書きましたが、わたし自身はアメリカへ住み始めてからずっとサンダル(ビーチサンダルではなくウォーキング用のサンダル)で過ごしてきました。個人的にはこれでも革命的な変化でしたが、南カリフォルニア人はその上を行っています。
文字通り雲ひとつない晴天が続くことが多いカリフォルニア。クレアモントでは高層ビルは皆無で、空全体を見渡せます。湿気は少なく気候はカラッとしていて、夏になっても蚊はまったくいません(蚊がいないというのは本当に気持ちがいいものです)。こんな環境に慣れ親しんでいると、雨に濡れたり土で汚れたりするのも気にならないのでしょう。
アメリカへ一家で引っ越してきて、大変なことは山ほどあります。でも、南カリフォルニアの気候に救われることは多いです。
気候のことを考えると、20世紀を代表する知の巨人、ピーター・ドラッカーのことを思い出します。わたしが住むクレアモントは、ドラッカーにとって「第2の故郷」なのです。
ドラッカーは1949年から22年間、ニューヨーク大学で教えていました。ところが、1971年に突然クレアモントに移り住み、2005年に死去するまでクレアモントを離れなかったのです。
生前のドラッカーにクレアモントの自宅でインタビューした際に、「なぜ大都会のニューヨークから片田舎のクレアモントに移住したのですか?」と聞いたことがあります。そしたら「気候がいいから」という答えが返ってきました。
南カリフォルニアの人は人生を楽しく生きていますよね。そういう意味では、僕にぴったりだなぁと思ったりします。
> カリフォルニア経済が未曾有の苦境に直面しているという現実を忘れてしまいます。
これには心から共感しました。
投稿情報: tadao | 2009年3 月21日 (土) 13:00
いつもコメントくださり、ありがとうございます。
同じ南カリフォルニアとはいっても、巨大なビジネス集結地であるLAは少し様子が違うのでしょうね。
クレアモントは小さな大学町です。ハリウッド的な華やかさとも無縁です。不況の影響はそれなりにあるとはいえ、比較的安定しているようです。たとえば浮浪者の姿をほとんど見かけません。
ちなみに、きょうのロサンゼルス・タイムズの1面には、5段ぶち抜きで、州都サクラメントに出現した「テントシティ」についての長文記事が出ていました。州都の一角がホームレスのたまり場になっているという話です。そんな場所ではさすがに悲壮感が漂っているのでしょう。
投稿情報: Yo Makino | 2009年3 月21日 (土) 14:26