7月1日にマネジメントの父、ピーター・ドラッカーの自伝『知の巨人 ドラッカー自伝』が日経ビジネス人文庫から発売になりました。ちょうどドラッカー生誕100年に合わせて出版する格好になりました。
本書は、ドラッカーが他界する直前に出版された『ドラッカー 20世紀を生きて』の文庫版です。新たにセブン&アイ・ホールディングスの伊藤雅俊名誉会長が「文庫版に寄せて」を書き、わたしが「訳者あとがき」を書きました。
わたしは現在カリフォルニア州クレアモントに住んでいますが、ここはドラッカーにとって「第2の故郷」です。帝都ウィーンで生まれ、ハンブルク、フランクフルト、ロンドン、ニューヨークなどを転々としながら激動の20世紀を生き抜いたドラッカー。最後の数十年を過ごしたクレアモントをこよなく愛していたようです。理由の一つは天候です。
わたしは5年前、クレアモントにあるドラッカーの自宅を訪ね、数週間かけて長時間インタビューしたことがあります。それを基にドラッカーは日本経済新聞で「私の履歴書」を連載し、最終的に本の形にしたのです。出版から数カ月後にドラッカーは他界したため、『20世紀を生きて』は結果的に遺作になりました。わたしが担当したインタビューも、生前のドラッカーにとって最後の長時間インタビューになりました。
当時はクレアモントに住むことになるとはつゆ思いませんでした。それだけに、『ドラッカー自伝』では個人的な思いも込めて「訳者あとがき」を書きました。クレアモント市内で時々会うドラッカー夫人(現在90代後半でありながら健在)の話も盛り込みました。一読していただけると幸いです。
ちなみに、妻はクレアモント大学経営大学院ドラッカースクールの学生です。今年はドラッカー生誕100年であり、ドラッカースクールはさまざまな行事を計画しています。生誕100年をきっかけに、本書が日本以外の人たちにも注目されるきっかけになればと思っています。ドラッカーが若きジャーナリストとしてヒトラーやゲッベルスに直接取材した話をはじめ、本書には歴史を感じさせる刺激的なエピソードが盛りだくさんに詰まっているのです。
補足しておくと、数十冊もあるドラッカーの著作の中で日本語版のみは本書だけです。その意味で本書は「訳書」ではなく「原書」。ドラッカー唯一の自伝でありながら、日本の読者にしか知られていないわけで、異例の本です。日本の読者にとってはありがたい話かもしれませんが、日本を除く世界のドラッカーファンが読めないようでは、あまりにもったいないと思います。
まだ拝見してませんが、見るのが楽しみです。
ところで、英語版を作られる予定は?
投稿情報: ganko | 2009年7 月 3日 (金) 02:09
簡単には説明できませんが、英語版のハードルは高いですね。もちろん実現できれば素晴らしいですが……。
投稿情報: Yo Makino | 2009年7 月 7日 (火) 12:55