経営学者ピーター・ドラッカーの生誕100年を祝う「ドラッカーウイーク」の期間中、各界から著名経営者や学者がクレアモントに集まります。来賓リストには、『ビジョナリーカンパニー』の著者で経営学者のジム・コリンズ氏のほか、イトーヨーカ堂創業者でセブン&アイ・ホールディングス名誉会長の伊藤雅俊氏も含まれています。
コリンズ氏はクレアモントにあるドラッカー宅を訪ね、ドラッカー自身から薫陶を受けたことがあります。ドラッカーを師と仰ぐ同氏は、新作『偉大な企業がどう凋落するのか(ハウ・ザ・マイティ・フォール)』を発表し、ますます意気軒高。ドラッカー亡き後、アメリカを代表する経営学者です。
たまたまですが、わたしは数カ月前にコロラド州ボルダーへ行き、コリンズ氏にインタビューしたばかりです。「日経ビジネス」の別冊付録「日経ビジネスマネジメント」用にインタビュー記事を書くためです。インタビューの中で、同氏は次のように語っています。
「ドラッカーがいなかったら私たちは今よりずっと暗い世の中にいることでしょう。ドラッカーは、社会をより生産的にしようとしてペンを執ったのではありません。社会をより人間的にしようとして著作を書き続けてきたのです」
コリンズ氏には10年ほど前にもインタビューしたことがありますが、話がとても上手です。週末にはドラッカースクールで講演する予定です。聞きに行きたいと思っていますが、子供たちを誰かに預けることができればという条件付きです。
一方、日本ではあまり知られていないですが、伊藤名誉会長はドラッカースクール最大の支援者です。今では同スクールの正式名称も「ピーター・F・ドラッカー&マサトシ・イトウ経営大学院」です。日本人ビジネスマンがアメリカのビジネススクールに多額の寄付を行うのは珍しいのはもちろん、日本人ビジネスマンの名前がアメリカの有力ビジネスクールに冠されたのは初めてです。
他界する前にドラッカーは日本経済新聞で「私の履歴書」を連載しました。友人である伊藤名誉会長に勧められたからこそ、連載を書く気になったのです。「私の履歴書」を土台にした自伝の文庫版『知の巨人 ドラッカー自伝』が今年の夏に出版されると、同名誉会長は同書向けに「文庫版に寄せて」を書きました。
ドラッカースクールでは「日本のサム・ウォルトン(ウォルマートの創業者)」としても知られる伊藤名誉会長は、「文庫版に寄せて」の中で次のように記しています。
「ドラッカー先生は『事業の目的とは顧客を作り出すこと』と語っておられました。名言だと思います。終戦直後、兄が経営する洋品店を手伝い始め、『お客様のほうを向いた商売』を教えられました。(中略)先生の言葉は身にしみてわかります」
余談になりますが、そんな来賓を前にして、妻がドラッカースクールの学生代表としてスピーチすることになりました。名誉なことですが、妻は今から緊張しています。
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