先日、棚を整理していたら、長男Aの保育園時代の記録が出てきました。保育園では保育士が毎日、個々の園児の行動について記録し、保護者に伝えています。その記録が大量にたまっていたのです。
捨てることにしましたが、1つだけ手元に残しておきました。優しいミズ・エルマが書いた2009年3月11日付の記録「ビジー・ビーズ(Busy Bees)部屋から保護者への報告」です(ビジー・ビーズ部屋とはAが所属していたクラスのこと)。ミズ・エルマは手書きで同日の”実験”について詳しく書いていたのです。
「きょう、わたしたちはクラスで新しいことを試してみました。『沈黙のゲーム』です。沈黙し続けているAがどんな気持ちでいるのか、わかってもらうためです。子供たちはみんな、Aがまったくしゃべらないことに興味津津なのです。
子供たちには次のように言いました。『さあ、これからゲームを始めます。あなたたちは外国へ行きますが、英語しか話せません。わたしが先生で、話す言葉はスペイン語だけです』。
最初、スペイン語しか話さなわたしを見て、子供たちは笑いました。でも、わたしが真剣な態度を見せ、スペイン語で質問を浴びせかけると、子供たちは『もうやめて!』と言い始めました。意思疎通できずに困惑し、頭が痛くなったのです。Aがどんな気持ちでいるか、身をもって理解できたのです」
結局、Aは保育園を卒園する2009年8月になってようやくしゃべり始め、今では幼稚園(実質的には小学校)で普通に英語で会話しているようです。ミズ・エルマが温かくAを見守ってくれたおかげです。